おーじの覚書

忘れちまった事、忘れらんねぇ事

サークルKサンクスでファミチキを頼めない

2017年 2月末日のことである。
兼ねてより進められていたファミリーマートサークルK・サンクスの経営統合、商品統合がついに完遂された。

これによってファミリーマートサークルKサンクスの違いは正真正銘『ガワ』だけとなり、店内空間は慣れ親しんだファミマのそれへと統一された。

私は人生で最も利用しているコンビニがファミマなので(たぶん)、このニュースはシンプルに朗報だった。
実質的にファミマの店舗数が増えるわけだし、これからは生活がさらに便利になるだろうと期待していた。

それからしばらくして。
意気揚々と訪れたサークルKにて、そんな浅はかな思考は粉微塵にされることとなる。





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皮肉が過ぎるわ


赤橙にKのロゴは、ずっと見てきたサークルKの姿。
しかしそこに翻る御旗は白青緑の「Welcome to Family mart!」

異常な光景、視覚が痛覚を伴う。





自分を磨くため長い放浪の旅に出ていた王子がいた。
祖国に帰った彼の目に映ったのは蹂躙される国土と隷属の果てに無理やり城に掲げられた憎き敵国の旗印…

まさにそんな気分。
敗北国の首都で大々的に行われる戦勝パレードのような不快さを感じる。

ファミチキ先輩」とかいうこいつの後輩になった覚えの全くない珍妙な擬人化キャラがファミマ帝国のプロパガンダだ。

誰にでもわかる。あるべきものがあるべきところに収まっている状態というのは正しく、美しい。

ガラスの靴は、王子が必ずシンデレラの元へ。
ファミチキは、あなたとコンビにファミリーマートへ。
決してファミチキ先輩はサークルKにいてよいものではないのだ。先輩、興が過ぎましたね。

そう。こんな所業、何かの間違いに決まっている。
きっと、私は昨今の仕事が辛すぎて…48歳の直属の上司(独身)がダンまち、読んだ?」と聞いてくるのが辛すぎて…いつの間にか会社帰りに夢の中に迷い込んでしまったのだろう。
胸の早鐘が収まっていくのを確かめて、私はゆっくりとサークルKの扉を開いた。

「いらっしゃいませ~」
いつも通りの、サークルKの制服に身を包んだ店員さんの姿に胸を撫で下ろす。

しかし。これが甘かった。
レジ横に、いた。
カラッとあがっちまったファミチキ先輩が、まるでオークの大群の如く保温ケースの中で蠢いていた。
遅かった。既に、本丸は陥落していたのである。



誤解のないように言えば。
私はファミチキは大好きだ。
ケンタッ○ーよりも美味いと思う。

しかし、しかしである。
私は、とても言える気がしなかった。
ファミチキください」と、この場で言える気がしなかった。
だって、だっておかしいのだ。
ここはサークルKで、決してファミリーマートではなくて、店員さんはいつもの制服で…
私は思考の渦に呑まれていた。

ファミチキを売らされているのは、この店員さんの本意ではないはずだ。
いつも通りの制服を着て、店頭に立って、敵国の商品を売らされる、宣伝させられる。

ファミチキお安くなってますよ~…」

これ自体が戦勝帝国ファミマが属国となった敗者に課した罪と罰だとでもいうのか。
あまりにも惨い。

私が「ファミチキください」と言ってしまったら。
彼はきっと笑顔でファミチキを包むのだろう。
しかし心では泣いているのである。
カウンターの下に隠した握りこぶしには血が滲んでいるはずだ。
本当はサークルKの商品を笑顔で売りたいに決まっている。
彼は間違いなく「サークルKの店員」なのだから。
その誇りの火はまだ消えていないはずなのだから。

だから。私は言えない。
とてもじゃないがサークルKサンクスで「ファミチキください」とは言えない。

最後に残った騎士の矜持を踏みにじるなど、痴れ者にも劣る行為だからだ。


私はファミチキを頼まずに買い物を済ませた。
きっといつか彼がこの国を建てなおすことを信じて。
サークルKで、再び真紅の旗が翻る日を夢見て。




すると、去り際に。彼は笑顔でこう言って見せたのだ。




「700円以上お買い上げなのでクジ一枚引いてください」

私は咆哮した。

「これ今ファミマでもやってるやつやんけ」

結果は応募券だった。
やはりファミマはクソ。

※ファミリマートもサークルKサンクスも大好きです。